離婚を考えたとき、気になるのは「年金分割でもらえる金額」ですよね。
特に長年専業主婦やパートだった方にとって、年金分割は将来の生活設計を大きく左右する大切な制度です。
今回は、以下のモデルケースをもとに、妻の結婚後の働き方に応じて、年金分割によってどれくらい年金が増えるかを具体的にシミュレーションしてみました。
- 婚姻期間25年
- 夫の婚姻期間中の平均年収600万円
年金分割の制度について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
→ 年金分割とは?制度の仕組みと手続きをやさしく解説
ではさっそく、パターン別に見ていきましょう!
年金分割でいくら増える?妻の働き方別にシミュレーション!
ケース1:結婚後ずっと専業主婦だった場合
📝設定
- 夫:サラリーマン、年収平均600万円、厚生年金に25年間加入
- 妻:結婚後ずっと専業主婦(収入なし)
💡ポイント
- 厚生年金のみが分割対象
- 国民年金(基礎年金)は増えない
- 婚姻期間が長い(25年)ため、分割の恩恵も大きい
📊試算イメージ
- 夫の厚生年金見込み額(25年分):年120万円(=月10万円)
- → これを2分割(50%)すると、妻に年60万円(=月5万円)加算される
つまり、年金分割によって妻の年金額は「月5万円」増えるイメージになります。
(※国民年金の基礎年金部分は別途受け取ります)
ケース2:結婚後ずっと扶養内パートだった場合
📝設定
- 夫:サラリーマン、年収平均600万円、厚生年金に25年間加入
- 妻:結婚後ずっと扶養範囲内でパート勤務(年収100万円前後)
💡ポイント
扶養内で働いていたため、妻自身は厚生年金に加入していません。
そのため、年金分割対象となるのは夫が婚姻期間中に積み立てた厚生年金のみであり、
専業主婦の場合とほぼ同じ取り扱いになります。
📊試算イメージ
- 夫の厚生年金見込み額(25年分):年120万円(=月10万円)
- → これを2分割(50%)すると、妻に年60万円(=月5万円)加算される
つまり、年金分割によって妻の年金額は「月5万円」増えるイメージになります。
❔専業主婦との違い
扶養内パートで少しでも自分で収入を得ていたとはいえ、厚生年金に加入していなければ、
年金分割の上では専業主婦と同じ扱いになります。
(※妻自身の基礎年金は、別途、働いた期間に応じてわずかに増える可能性はあります)
ケース3:途中までパート、後半10年は正社員だった場合
📝設定
- 夫:サラリーマン、年収平均600万円、厚生年金に25年間加入
- 妻:結婚後、前半15年間は扶養内パート(年収100万円前後)
- 後半10年間は正社員(年収300万円)として厚生年金に加入
💡ポイント
このケースでは、妻も婚姻期間中の後半10年間は厚生年金に加入していたため、
年金分割の際、妻自身の厚生年金分も考慮されることになります。
つまり、夫婦双方の厚生年金加入記録に基づき、按分計算が行われます。
📊試算イメージ
- 夫の厚生年金見込み額(25年分):年120万円
- 妻の厚生年金見込み額(後半10年分):年30万円(=月2.5万円)
この場合、単純な50%分割ではなく、
「夫婦それぞれの厚生年金加入実績をならしたうえで」按分されるため、
- 夫の年金120万円に対して、
- 妻も30万円分の厚生年金を持っているので、
- 分割後、**妻の増加分は年40万円前後(月3万円前後)**になると予想されます。
✅まとめ
- 月額換算で、妻の年金は約3万円増加するイメージ
- 専業主婦や扶養パートより増加幅は小さくなる
- それでも年金分割の恩恵は十分に受けられる
単純な受給額の合計÷2にはなりません!
年金分割は、「婚姻期間中の厚生年金の納付記録(標準報酬額)」をもとに按分されます。
そのため、単純に夫婦の受給予定額を足して2で割るわけではありません。
夫婦の働き方や年収によって、分割後の金額は微妙に異なります。
特に共働き期間がある場合は、妻の年金も考慮されるため、分割による増加額は控えめになる傾向があります。
ケース4:結婚後ずっと正社員(年収300万円)だった場合
📝設定
- 夫:サラリーマン、年収平均600万円、厚生年金に25年間加入
- 妻:結婚後もずっとサラリーマン(年収平均300万円)、厚生年金に25年間加入
💡ポイント
このケースでは、夫婦ともに婚姻期間中ずっと厚生年金に加入していました。
年収差はあるものの、妻自身も厚生年金をしっかり積み立てているため、年金分割による増加額はかなり控えめになります。
📊試算イメージ
- 夫の厚生年金見込み額(25年分):年120万円
- 妻の厚生年金見込み額(25年分):年60万円
(※年収が半分なので、厚生年金の受給額も大体半分程度と想定)
この場合、双方がしっかり厚生年金を積み立てているため、年金分割による按分の必要性自体が低くなり、
- 妻が夫から受け取れる年金分割の増加分は年10万円前後(月8,000円程度)にとどまる可能性があります。
✅まとめ
- 月額換算で、妻の年金は約8,000円程度増加するイメージ
- 専業主婦やパートの場合と比べると、増加幅はかなり小さい
- それでも年金分割を行うことで、わずかでも将来の年金額アップが見込める
家計も支えて、家事や育児も頑張ってきたのに、年金分割でもらえる額が思ったより少ない…
そんな現実に、なんだかモヤモヤしてしまうかもしれません。
でも、それはあなたがしっかり努力してきた証。
これからの自分の人生を大切にするために、今できる選択を積み重ねていきましょうね。
ケース5:夫が最初からずっと自営業だった場合
📝設定
- 夫:ずっと自営業(厚生年金に加入していない)
- 妻:結婚後の働き方はケースにより異なる(ここでは、妻が専業主婦〜扶養内パートを想定)
💡ポイント
自営業の夫は、厚生年金ではなく国民年金に加入しています。
そして、国民年金(基礎年金)は年金分割の対象外です。
つまりこの場合、
そもそも年金分割できる厚生年金が存在しないため、
妻が年金分割を申し立てても、何ももらうことはできません。
📊試算イメージ
- 分割対象となる厚生年金:なし
- → 当然ながら、妻の年金額は増えない
✅まとめ
- 年金分割できないので、受取額は変わらない
- 自営業の夫との離婚では、年金分割の恩恵は受けられないので注意
- 将来の年金額に不安がある場合は、他の資産形成や支援制度も視野に入れたい
ケース6:夫が自営業、妻がサラリーマン(年収300万円)だった場合
📝設定
- 夫:ずっと自営業(厚生年金なし)
- 妻:結婚後ずっとサラリーマン(年収300万円)、厚生年金に25年間加入
💡ポイント
この場合、夫に厚生年金がないため、
年金分割の対象になるのは「妻自身の厚生年金記録」だけになります。
つまり、年金分割を申し立てると、
妻が自分で積み立てた厚生年金を、夫と分け合うことになってしまう
= 年金が減ってしまう可能性が高い、ということです。
📊試算イメージ
- 妻の厚生年金見込み額(25年分):年60万円
- → これを半分ずつ分割すると、夫に年30万円分が移転してしまう
結果として、
- 妻の年金額は、月2万5,000円ほど減ってしまう可能性がある
✅まとめ
- 年金分割によって、妻自身の年金が減少するリスクがある
- 自営業の夫との年金分割は慎重に判断する必要あり
- 必ず離婚前に年金事務所等で試算し、リスクを理解しておくことが大切
ケース別|年金分割による増加額まとめ表
ケース | 妻の働き方 | 年金分割による増加額(月額目安) | コメント |
---|---|---|---|
1 | 結婚後ずっと専業主婦 | 約5万円増加 | 夫の厚生年金を半分受け取れるため大きな増加 |
2 | 扶養範囲内パート | 約5万円増加 | 専業主婦とほぼ同じ取り扱い |
3 | 途中までパート、後半10年正社員(年収300万) | 約3万円増加 | 妻も一部厚生年金加入、分割額はやや減少 |
4 | 結婚後もずっと正社員(年収300万) | 約8,000円増加 | 妻も厚生年金にフル加入、分割額はかなり小さい |
5 | 夫が最初からずっと自営業 | 0円(分割対象なし) | 厚生年金未加入のため分割できない |
6 | 夫自営業 × 妻サラリーマン(年収300万) | 減少するリスクあり | 妻自身の年金を分割するため注意が必要 |
まとめ:年金分割で本当に増える?知っておきたい現実と対策
年金分割は、離婚後の生活設計にとって心強い制度です。
特に結婚後に専業主婦やパートだった場合、年金額が月5万円近く増えるケースもあり、将来の安心につながります。
一方で、
- 共働き期間が長かった場合
- 夫が自営業だった場合
こうしたケースでは、思ったほど年金が増えなかったり、むしろ減少するリスクすらあります。
この記事でご紹介した通り、年金分割の効果は「婚姻期間中の働き方」と「夫婦それぞれの厚生年金加入状況」に大きく左右されます。
だからこそ、離婚を考えたときには
ただ漠然と「年金分割すれば安心」と思うのではなく、
✅ 自分が本当にいくら増えるのか
✅ 損をするリスクはないか
を事前にしっかり確認しておくことがとても大切です。
そして、たとえ年金分割で増える金額が少なくても、
あなたがこれまで積み上げてきた努力や人生の価値は、決して数字だけでは測れません。
これからの人生を、よりよいものにしていくために。
必要な知識と準備を、ひとつずつ整えていきましょう。