離婚して、夫から家を買い取りました。
名義変更や住宅ローンの審査も決して簡単ではなかったけれど、自分でなんとか乗り越えたことは、今でも小さな誇りです。
だけどその後、思いもしなかった「税金の落とし穴」に気づくことになりました。
家を売ったときにかかる税金、住宅ローン控除と売却益控除の併用NGルール、そして、20年以上住んでいた家なのに「短期譲渡所得」扱いになってしまう現実。
この経験が、これから離婚後に家をどうするか考える誰かの参考になればと思い、この記事を書きます。
離婚時に家を買い取るとは?簡単に振り返り
私たち夫婦が新築で購入した家は、約3800万円。
長い時間をかけて二人で住宅ローンを支払ってきました。
しかし、離婚にあたって、家を手放すか、どちらかが引き取るか、という選択肢に直面。
私は最終的に、残債を支払う形で家を買い取ることに決めました。
無事に名義変更も済ませ、新たな住宅ローン契約も完了。
ここまでは「大変だったけど、やりきった」という達成感に包まれていました。

でも、離婚が成立して1年以上経ったころから、このままこの家に住み続ける選択肢はないな、という気持ちになりました。
そして、家の売却→住み替えの検討を開始することになるのですが、その時になって「え?知らなかった!」ということがたくさん出てくるのです・・・。
家を売るときにかかるお金
家を売ると税金がかかる
家を売却すると【売却益】に税金がかかる仕組みになっています。
売却益とは、売った金額−取得した金額の差額。
私の場合、仮に2500万円で売却できたとすると、2500万円(売却価格)−取得価額の売却益が発生することになります。
取得額は当初購入した金額ではない!買い取った金額
この取得した金額が1つ目のポイントです。
離婚で家を買い取った場合、取得価額は買い取った金額になります。
もともと3800万円で購入した家でも、自分が買い取った金額(私の場合残債分で買い取り)が新たな「取得価額」として扱われます。

20年以上住んだ訳ですから、ローンも20年以上払ってきました。当然残債はかなり減っていますよね。
税率は所有期間で大きく変わる
そして2つ目のポイントは売却益に対する税率は、家の【所有期間】によって大きく変わるということです。
所有期間 | 税率(所得税+住民税+復興特別所得税) |
---|---|
取得から5年以下(短期譲渡所得) | 約39.63% |
取得から5年超(長期譲渡所得) | 約20.315% |
長く住んでいた家でも、税務上は「所有期間5年」を基準に判断されるため、短期か長期かで支払う税金が2倍近く変わることもあるのです。
もし、2000万円の売却益が出た場合、以下の金額になります。
- 短期譲渡所得の税金=792.6万円
- 長期譲渡所得の税金=406.3万円



私はこの家に20年以上住んでいたのに、買い取った日が基準になるので短期譲渡所得扱いになるんです。
短期でもかなりの税額になりますが、倍も違うと本当にショックです。
救済措置「3000万円特別控除」
そんな税金ですが、ここで救済策もあります。それが【3000万円特別控除】です。
3000万円特別控除とは
マイホームを売却したときに売却益から最大3000万円まで非課税にできる
という特例です。
たとえ売却益が2000万円あったとしても、この特別控除を適用できれば、税金は0円になります。
住み替え後でも、以下の条件を満たせば問題ありません。
- 住まなくなった日から3年以内に売る
- 売却前に第三者へ貸し出していない
- 売却した年の前年・前々年にこの特例を使っていないこと
- 譲渡先が「特別な関係者」(親族など)でないこと
私も、この特例を使える見込みでした。
住宅ローン控除と3000万円特別控除は併用できない
そして重要なポイントの3つ目!
それは、住宅ローン控除と3,000万円特別控除は併用できないということです。
たとえば新しく家を購入して住宅ローンを組んだ場合、以下の併用はできません。
- 新居で住宅ローン控除を使う
- 元の家を売ったときに3,000万円特別控除を使う
特に注意が必要なのは、私のように
✅ 離婚時にいったん家を買い取り
✅ その後、住み替えで新たな住宅ローンを組んだ
というケースです。
通常、家を売ってから新居を買う流れならこうした問題は起きにくいのですが、一度買い取った旧宅を抱えたまま新居を購入し、先に住宅ローン控除を申請してしまうと、3,000万円控除が使えなくなるリスクが生まれます。
私は新しいマンションで住宅ローン控除を申請しかけましたが、ギリギリでこのルールに気づき、申請を見送りました。
その結果、旧宅の売却時に3,000万円特別控除を適用できる道を残すことができました。
これは事前に知らなかったら本当に大変なことになるところでした。
住宅ローン控除の金額と売却益に対する金額を計算し、メリットが多い方を選択しなければなりません。
住宅ローン控除を選ぶか、3000万円の特別控除をえらぶか


- 短期譲渡所得の場合、売却益*39.63%
- 長期譲渡所得の場合、売却益*20.315%
住宅ローン控除の総額は、おおまかに
【借り入れた金額 × 0.7% × 適用年数(10年 or 13年)】
でイメージできます。適用年数は新築や一定基準を満たす住宅は13年、その他は10年です。
※実際は年々残高が減るため、控除額も少しずつ減少します。
- STEP1の金額が多いなら、3,000万円特別控除を選択
- STEP2の金額が多いなら、住宅ローン控除を選択
具体的にイメージしてみましょう。
- 旧住宅の売却益は2,000万円
- 住み替え後の住宅ローンは2,500万円(中古マンション)
- 短期譲渡所得(取得してから5年未満)
STEP1の金額:2000万円*39.63%=792.6万円
STEP2の金額:2500万円*0.7%*10年=175万円
600万円以上の差がありますよね。このケースでは圧倒的に3,000万円の特別控除を選ぶべきです!
まとめ
- 離婚後に家を買い取った場合、取得価額は買い取った金額になる
- 家を売ったときは、売却益に対して所得税・住民税がかかる
- 所有期間5年以内なら短期譲渡所得扱いになり、税率は約39.63%
- ただし、3000万円特別控除を使えば、売却益を非課税にできる
- 住宅ローン控除と特別控除は併用できないので注意!
- 特に、離婚時に家を買い取ったあと新たに住宅ローンを組む場合は、事前に戦略を立てておくべき
- 離婚時の不動産取得は、手続きだけでなく、税金まで見据えて慎重に判断を!
今回はとても難しい記事になってしまいましたが、本当に大事なことなので不動産売買をする予定がある方はしっかり読み込んで参考にしてくださいね。